2016年10月9日 発行 | 2022年1月22日 掲載

金管合奏のための交響曲(金管五重奏曲第1番)Op. 5

ヴィクトル・エヴァルド

中井 亮(トランペット)

エヴァルドは、1860年にサンクトペテルブルクに生まれました。大学で土木工学を学び、技師として生計を立てるかたわら、チェロやコルネットを演奏していました。

「金管合奏のための交響曲」は、金管五重奏というジャンルの黎明期に書かれた作品の一つであり、「金管五重奏曲第4番」に次いで2番目の(!)金管五重奏曲です。というのも、「第4番」は元々金管楽器のために書かれたのですが、難しすぎて演奏できずに弦楽四重奏に改作され、さらに後年に再び金管五重奏に直された、という経緯があるためです。

初演は1912年に行われました。このときは、コルネット2本、アルトホルン、テナーホルン、ロータリーチューバという編成で、エヴァルド自身がチューバを吹いていました。

生前に出版されたのは、この「第1番」だけであったため、1964年に残りの3曲が見つかるまでの長い間、本作品がエヴァルドの唯一の金管五重奏曲であると考えられていました。

楽曲解説

全曲を通して2度上行-2度上行-3度下行の動機が支配しており、この動機が様々に変容されながら主題を構成します。

第1楽章

変ロ短調 ソナタ形式

地の底から響くような一種の不気味さをともなって第1主題が提示されます。第2主題は動機Aの逆行(3度上行- 2度下行- 2度下行)ですが、3度上行の間に短2度の経過音程を含みます。


譜例(クリックで拡大します)

第2楽章

変ト長調 三部形式

5拍子が特徴的な第1主題は、新たな動機Bを提示し、さらに動機Aの反行型を含みます(ただし3度上行の間に経過音が入る)。次に、やはり5拍子の快活な第2主題が現れ、再び冒頭の主題が装飾を加えて演奏されます。


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第3楽章

変ロ長調 展開部を欠くソナタ形式

第1楽章とは打って変わって、幸福感と安堵感に満ちた最終楽章には、これまでに提示された2つの動機と、動機Aの反行型が、すべて経過音を含まない完全な形で初めて現れます。曲は快活さを保ちつつ再現部を経て、悠然たる結尾部を迎えます。


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