フェリックス・メンデルスゾーン
先月の Orchestra Da Vinci 第7回演奏会で演奏した「スコットランド」交響曲をはじめ、メンデルスゾーンの交響曲は一般的に5曲が知られていますが、実はその前にも「交響曲前史」と呼ぶべき作品集がありました。それが本日演奏する《シンフォニア》です。
今から200年前の1821年、当時12歳であったメンデルスゾーンは《シンフォニア》の作曲を始めました。この全12曲の《シンフォニア》は、メンデルスゾーン家で日曜日に開催されていた音楽会のために作曲されたもので、当時作曲を師事していたツェルターの影響を受けて北ドイツの古い音楽の書法で書かれています。
《シンフォニア》には、作曲家メンデルスゾーンの最初期の成長過程が表れています。第6番以降、徐々に対位法やフーガの書法が洗練され、編成の面では第8番以降で管打楽器が加わります。1824年に作曲された交響曲第1番は、この一連の成長の到達点といえるでしょう。メンデルスゾーンも交響曲を《シンフォニア》の延長上に位置づけていたようで、交響曲第1番の自筆スコアには「シンフォニア第13番」と題名が記されています。一方で楽譜は1960年代まで出版されず、その出版譜も初歩的な誤植が訂正されずに放置されており、その重要度に反して不遇の作品といえます。
最後に、最初期の《シンフォニア》と最後の交響曲「スコットランド」の関連について私見を述べておきたいと思います。《シンフォニア》、特に初期の第1番~第6番では、楽章結尾部での全楽器によるユニゾンが多用され、結尾に相応しい力強さを感じさせます(本日演奏する第2番の第1楽章と第3楽章もその一例です)。一方で「スコットランド」の結尾部でも最後に2小節だけ、全弦楽器によるユニゾンが現れます(管打楽器は全く異なる伴奏形)。このユニゾンは一見変わった管弦楽法ですが、筆者には、最後の交響曲に22年の時を超えて少年メンデルスゾーンの一面が再び現れたような、不思議な懐かしさと愛おしさを感じさせるのです。
今年、2021年は、メンデルスゾーンの交響曲の歴史が始まってからちょうど200年の記念すべき年です。8月の「スコットランド」および本日の《シンフォニア》第2番の演奏が、皆様にとってメンデルスゾーンへの興味を深めるきっかけとなれば幸いです。